「かすり糸界の革命児」----
日本の着物や織物業界から、信頼と注目を集める、村友産業(有)。
着物の糸づくりをなりわいとする村友産業さんは、その技術を生かし、ヨーロッパの伝統技術「シェニール織り」を甦らせた、新潟・十日町の企業です。その業界では「かすり糸(模様の入った繊細な糸)界の革命児」と呼ばれる、村友産業(有)とは・・・?
(有) 代表取締役 村山友康さんにお話しを伺ってきました。
こちらがシェニール織り。18世紀にスコットランドで生まれた織り方です。
日本に伝わったのは明治10年頃。その後一旦、日本での生産技術は途絶えましたが、村友産業さんと新潟県が力を合わせ、再度日本でも作られるようになりました。ドイツの「フェイラー」というブランドが有名ですが、実は、日本でも作られている織り物なんですよ~!
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つむぎ糸、そして「シェニール織り」との出会い----
村友産業さんは、着物、特に「つむぎ」を織るための、柄付きの難しい糸を作ることを得意とする会社として、スタートしました。なんと、十日町で作られている緻密な柄の紬は、100%村友産業さんの特許を使用して織られているんだとか!
と言うと、大変伝統ある糸屋さんのように思えますが、創業は昭和44年。友康さんで2代目、新しい会社という事実に、まずびっくり!
それぞれに柄の入ったタテ糸とヨコ糸を合わせることで、美しい模様を織りあげる「つむぎ」。
プリントではなく、柄自体を織り込んだその布は、表も裏も同じ柄、3代使える高品質な憧れの着物でした。
しかし、タテ糸とヨコ糸の合わせがずれると、美しいつむぎにはなりません。職人の技と、繊細な糸が織りなす「つむぎ」は、海外では「奇跡の反物」とも称賛される日本の技。その技を支えているのが、村友産業さんのような、糸を作る会社さん。
そんな日本の技を支える村友産業さんが、ヨーロッパの伝統工芸「シェニール織り」に挑戦することになった理由とは、一体・・・?
それは、クリスマスイブ、1本の電話からはじまりました。
「日本でシェニール織りを作れないだろうか?」
とある問屋さんが、“かすり糸界の革命児”村友産業さんに、そんな相談を持ちかけました。受話器をおいて、友康さんのお父さんは、ひとこと。
「最高のクリスマスプレゼントが届いたぞ。」
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「シェニール織り」ってどんな布?---
シェニール織りは、ヨーロッパで生まれた、織物です。明治のころには和歌山で作られていたものの、後継者が消え、日本での生産は途絶えてしまいました。
「シェニール織り」の最大の特徴は、「再織り」。
普通、布は糸から織ります。しかしシェニール織りは、まず「糸にするための布」を作ります。その布を割き、「モール糸」と呼ばれる糸を作り、最後に柄を合わせて織っていくことで、吸水性がよく、軽く、丈夫で美しい柄入りの布になります。
・・・なんて手のかかる作業!!!!
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伝統と新技術の融合---
こんな手のかかる作業を「ビジネス」に・・・。
その秘密は、伝統と新技術の「住み分け」と「掛け合わせ」の上手さにあると感じました。
織りのデザインが決まったら、まず画像をコンピュータに取り込み、「エアピン織機」という自動織り機が、糸にするための布を、自動で織りあげます。この過程は、人間のアタマで考えるよりも、システムで管理した方が、手間も時間も圧倒的に効率的。
ちなみに、デザインをコンピュータに取り込むとこんな感じ。
この設計図をもとに、コンピュータが素早く正確に動くそうです。
モール糸ができたら、いよいよ仕上げ!
ヨコ糸の柄を合わせて、美しい模様にしていく・・・。
この工程は、手織りで行われます。職人の腕がたよりです。
友康さんも、もちろん職人のひとり。
「職場では、ほとんどしゃべらないですよ。
仕事仲間が、こんな風に販売している自分を見たら、
すごく驚くはず。」
卓越した集中力が必要な、職人の世界なんですね!
でも、そもそもそのシステム、すごくありませんか!?
「技術開発の際は、新潟県に協力していただきました。
それで、コンピュータを導入することができて・・・。
昭和56年、シェニール織りを作ることに成功したんです。
うちは他にも様々な特許を持っていたりするのですが、
開発に特許料、お金の面では大変な時期もありました。
そんな時、ある銀行の方から、こんな言葉をもらったんです。
『おめさんらのアタマにお金を貸すから、完成させろ』
今でも感謝しています。本当に有難かった。」
ヨコ糸を合わせて織っているので、タテのラインやこんな
格子模様をつくろうなんて、普通、思わないんですよ、と
笑う村山さん。それでも挑戦してしまうのは、職人魂でしょうか。
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今とこれから----
「今回は、はじめての県外での販売会でした。
お客さんの違いや、反応が直で見られて、
収穫になりました。
今までは、糸をつくるところまでがうちの仕事で、
そこから先のことは、また別の考えだったんだけど、
お客様とお話しすると、新鮮で楽しいですね。」
苦労・やりがいを伺うと、
「でもやっぱり、ものづくりは楽しい」と、村山さん。
「モノがあるから商売が生まれるわけで・・・
実態があるものですからね。
そういう強さがね、いいところですよね。
農業だって、工芸だって、“ものづくり”を
してる人たちは、すごいと思う。」
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村友産業さんのシェニール織りは、独自に仕入れた繊維を
使っているので、軽いのにボリュームがあり、色彩豊かで華やか、
かつ、吸水性がいいものに仕上がります。タオルのように
ひっかけてダメになってしまうことなく、また、百貨店などに出す
商品なので、品質の高さは折り紙付き。
ちなみに、アルビレックス新潟のサポーターでもある村友さん。
ですが、その話はまた次の機会に!
村友産業さん、ぜひ知ってほしい、新潟のすごい会社さんです。
<村友産業(有)facebookページ>