おいしいお米は、おいしく炊いて、
おいしくいただきたいと思うのが、
人の常。
土鍋ごはんが美味しいのはご存じのとおり。
しかし、“魔法の炊飯器”ともいわれる、
「蒸しかまど」を、みなさんご存じでしょうか?
蒸しかまどとは、大正~昭和初期に
大きな料理屋さんやお屋敷などで使われていた、
木炭などで炊く幻の炊飯器のことです。
昭和20年代以降、便利なガス釜や電気釜の
普及とともに、姿を消してしまいました。
この「蒸しかまど」を現代によみがえらせたのが、
有限会社 小田製陶所 代表取締役 小田正雄さん。
(新潟県阿賀野市)
http://www.odakame.com/2010/02tutitotomoniikiru.html
「蒸しかまどは、15年くらい前に、
うちの倉庫から偶然、発見したんです。
私も、うちの親父も使い方が分からなくてね。笑
90歳を超える祖母に聞いて、ようやく、
蒸しかまどだと分かりました。
『昔、奉公に行った先で、旦那様用のご飯を、
毎食、蒸しかまどで炊かされており、
つまみ食いしたら、それはそれは美味しかった』
そう、話してくれまして。
それで、祖母が炊き方を覚えていたんですね。
実際に自分たちでも炊いてみたら、
すごく美味しくって!
「かつて自分の会社はこんなに素晴らしい
技術をもっていたのか・・・」
と感動を覚えました。
ちょうどその頃、阿賀野川流域を舞台に地域再生を目指す
「一般社団法人あがのがわ環境学舎」さんと交流もはじまって。
蒸しかまどは、阿賀野川の豊かな土壌(粘土)から作られるものなので、
ある時、「阿賀の宝もん」として蒸しかまどを紹介させてもらったんです。
◇一般社団法人 あがのがわ環境学舎◇
http://aganogawa.or.jp/aboutus/
そしたら、環境学舎の方から咲花温泉組合
(阿賀野川の対岸の温泉街)をご紹介いただき、
咲花温泉のイベントで蒸しかまどを披露しました。
「懐かしい」「美味しい」と言っていただいてね~!
「面倒でも、この蒸しかまどを作ってくれないか?」
そんな声を受けて、
復刻することを決めたんです。」
◆◆◆
小田製陶所は、その名のとおり、土をつかって陶器をつくる会社です。明治6年に水を保管するための甕(かめ)を作ることからスタートし、かまど、蒸しかまど、潟の整備のための素焼き土管、植木鉢など・・・時代のニーズに合わせた「素焼き」商品を展開されています。
現在の主力商品は、植木鉢などの他に、田んぼを支える「素焼き土管」。おいしいお米や農作物を作るためには、地下水をコントロールする仕組みがもつくっています。新潟のおいしい食を、まさに“見えないところで”支えているのが、小田製陶所さん。
----土とともに生きる。
「小田製陶所は、私で5代目。
創業は明治6年、当時は水甕を作る会社でした。
父はまっすぐな素焼きの職人。
自分は長男で、家を継がなきゃいけないんだろうなあと
思ってはいたけど、でも、昔は嫌ね~笑
熱いし、重いし、体力面でも、
大変なのが分かっていましたから。
でも、色々ありまして、家を継ぐことに。
でもね、どうせやるなら、
思いっきりやってやろうって決めたんです。
焼きものを通して、人の役に立てるように。
そこでまず取り組んだのが、今まで破棄していた
焼きもののリサイクル。
製造の途中で出る破損品を、何かに使えないか。」
-----人とともに生きる。
「一生懸命やってるとね、
誰か、人が、アイデアをくれるんですよ。
素焼きの焼きものは、炭と同じ効果があります。
色もきれいだし、湿気剤や床下セラドライなどの
建築資材として展開するようになりました。
破損品を砕いて資材を作ると、
さらに細かい粉が出ます。
これを壁につかえないかな、と、
現場で左官屋さんにアイデアをいただいた。
左官屋さん、工務店さん、それに小田製陶所。
この3者で開発したのが、「越の壁」という商品。
そこから、遊歩道舗装(やきもの散歩道/県技術賞受賞)
事業を阿賀野市さんと一緒に行ったり、
地下水をコントロールするための装置、
「CLAY-PIPE暗渠(あんきょ)地下かんがいシステム」を
新潟大学さんと一緒に研究開発したり・・・。」
----「土と炎」から離れない。
「私たちは、焼物を通じて世の中のお役に立つものを提案する会社です。
こんなことをしたい、というお客様のニーズに、
焼物という技術で応える。
もともとが、水甕(みずかめ)を作っていた会社です。
水甕って生活の知恵で、その甕の中に水を入れると、
なぜか水が悪くなりにくいものなんですね。
でも、水道技術が上がって、水甕が必要なくなった。
その代わり、農地改革にともなって、
田んぼや畑をもっとコントロールするため、
焼物の技術を変換させて、下水道用の管を作った。
それもまたニーズがなくなってきたので、
植木鉢だとか、他でうちの技術を応用して・・・
焼物の技術は変わらないけど、
商品は常に、人の生活に密着して変化してきました。
その中で蒸しかまどを復活させられたのは、
本物志向、世間が食に本物を求めている、
そんな時代の流れも大きいと思います。
タイミングが良かったですね。」
-----「蒸しかまど」復刻ストーリー
「蒸しかまどを復刻したのは、2012年。
復刻することを決めてから、まずは、
作れる人を探しました。
愛知に職人さんをみつけて、
うちの蒸しかまどを見ていただくと、
「まだあったんだ!!」って、
凄く感動してくださって。
人、技術、原型があり、
復刻の条件は揃いましたが、
この小田式の蒸しかまどをつくるのは、
誰もがはじめてのチャレンジ。
試行錯誤の連続でした。
商品ができてからも、
販売ルートや、量産できない点など、
まだまだ課題もあります。
でもね、私たちは農家の方々の黒子です。
蒸しかまどを作るのって、
田んぼ用の土管をつくるのと同じで、
農家さんのためになる仕事。
蒸しかまどの存在が、米の増販につながれば。」
-------重要なのは、コミュニケーション。
「“昔食べた蒸しかまどごはんの美味しさが
忘れられなくて、
でも一升炊きじゃあ個人宅では買えないな・・・
でも、食べたいな・・・”
という声から生まれたのが、1合炊きの蒸しかまど。
時間も失敗も研究も重ねて、
集中して半年間で商品化しました。
蒸しかまどは安いものではないし、
1つ作るのに約1か月はかかる。
だから、お客様とのコミュニケーションが
自然と濃くなります。
特に1合炊きは小さくてアレンジがききやすくて、
こんな風に使ってみたよ!こんなレシピはどう?
って、後日メールをいただくことも多いんですよ。
商品を届けて、はいどうも、で終わるのではなくて、
販売し終わってからも関係が続く。
商品を作って売っている人間として、
これは、冥利につきる瞬間ですね。」
--------蒸しかまどはなぜ美味しい?
「水甕もそうだけど、生活の知恵って、
理由は先にないんですよ。
なんでか分からないけど、水がもつ。
なんでか分からないけど、これで炊くとおいしい。
なぜ美味しいのかは、
あがのがわ環境学舎さんと一緒に、
研究をスタートしたところ。
今年から、「蒸しかまどの美味しく炊ける理由」を
新潟大学様と共同研究を行い理由を探っていきます。」
--------新潟には「もっとある」。
「新潟には、もっとある。
そう思います。
今、県内各地それぞれの地域で、
個々に光り輝く活動が多発しています。
阿賀野市にも、もちろんあって。
“ここに来なければ”
そんな、各地域ごとの魅力、
これを強く出していくような動きが、
有志と行政が手を組んで、
市町村単位、地域単位で起こっています。
それらの速度をぐっと上げて強くするには、
個々でやっているものを一円にするような、
チャンスがあるといいなと思います。
個々でやっているものが、集まり、交流する、
出会って更に面白いことが生まれる、
そんなチャンスが、県単位でもあるといいな、
と思っています。」
あがのがわ環境学舎 事務局の山崎さん(右)も一緒に、
おいしい蒸しかまどごはんをネスパスでふるまってくださいました。
ありがとうございました!!
◇◇◇
時代とともに変わり続ける、
小田製陶所さんの商品ラインナップ。
モノが中心でなく、
技術が中心。
変わらない技術があるからこそ、
様々な商品を展開し続けることができ、また、
かつての素晴らしい商品をも現代に伝える、
有限会社 小田製陶所。
おもてなしのひとつに、極上のごはんを。
極上のごはんを炊くなら、蒸しかまど。
そんなかつての常識が、今ふたたび、
新しいスタンダードとなっていくのでは。
今回は、そんな予感を感じさせる新潟の会社、
新潟県阿賀野市の小田製陶所さんを
ご紹介いたしました。
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有限会社小田製陶所
http://www.odakame.com/index.html
〒959-2215
新潟県阿賀野市六野瀬2312
TEL 0250-68-3432
FAX 0250-25ー7527
E-mail otoiawase@odakame.com
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